第8章|鹿児島編 第1期 統合失調症発症

工場での勤務と統合失調症発症、そして退職へ

8-1 国分SONYという工場常駐

 自社に戻ってきた。
それは即ち、クビに近づいたということを意味する。

 ここで次の仕事がなければ、恐らくクビを通告される。
そんな状況だった。

 なんとか営業の方が仕事を取ってきてくれた。
行き先は、国分のSONY工場

 お金もなく、選択肢もない私は、行かざるを得なかった。

 鹿児島は水が綺麗で、半導体を作るには適した環境らしい。
私はそこで、パソコンのトラブルシューティングを担当した。

 正直、不器用な性格の私はハード系が苦手だった。

 ・メモリ増設
 ・問い合わせ対応
 ・キーボード修理
 ・初期セットアップ

 さらに、サーバーメンテナンスもある。
20時頃まで何もせず待機し、夜にサーバールームでヒソヒソ作業する。

 良かったのは、食堂だけだった。


 ここで一番キツかったのは、通勤だ。

 電車は1時間に1本。
40分揺られ、乗り遅れれば1時間待ち。

 駅に着いてから、徒歩30分
帰りも同じ。

 都会で暮らしていた私には、これが強烈なストレスだった。

 やがて、眠れなくなった。

 国分に常駐して、1年が経とうとしていた


8-2 統合失調症 発症

 ある休日、部屋のインターホンが鳴った。

 覗き穴を見ると、親父だった。

 母と私は、
「刺されるんじゃないか」
と本気で恐怖した。

 ついに居場所を突き止められた。
そう思った。

 それ以来、周囲が気になって仕方がなくなった。

 ・親父に似た人
 ・親父の車に似た車

 それを見るたびに、恐怖した。

 極度の不眠が続いた。


 恐怖が頂点に達した、ある夜。

 眠れずにいると、
あの恐ろしい病気が発症した。

 ――ヤツが囁き始めた。

 ここから先、私はヤツを
「存在X」
と呼ぶことにする。

 世間では、統合失調症という。

 簡単に言えば、
不眠からくる重度の幻聴だ。

 これは、なった人にしか分からない。


 存在Xは、脳が覚醒している間、
四六時中、囁いてくる。

 最初は、隣の住人が騒いでいるのだと思っていた。

 だが違った。
謎の男女2人が、常に話しかけてくる。

 それは、

 ・通勤中
 ・仕事中

 ずっと続いた。

 声に出して返事をすると、
第三者から見れば完全に異常者だ。

 一人になると、もう爆発していた。
完全に限界を超えていた。


 家に帰り、暴れる。

 他人に危害を加えなかったことだけは、
今でも本当に良かったと思っている。

 妹が私を心療内科へ連れて行った。

 診断結果は、統合失調症

 ドクターからは、
3カ月の休職
を告げられた。


8-3 初めての休職

 薬漬けの生活が始まった。

 存在Xは、相変わらず囁いていた。

 薬を飲み始めて、2週間後。
存在Xは、忽然と消えた。

 本当にギリギリだった。

 眠れず、死を覚悟した。
見えない世界があるのではないかと、少しスピリチュアルにもなった。

 ある人が突然、統合失調症を発症し、
「無敵の人」になって事件を起こす。

 多分、あれも存在Xの仕業だと、私は思っている。


 休職中、最初はFallout4にガチハマりした。
だが、それを最後にゲームを完全に卒業した。

 その後は、生きる死骸のような生活。

 何もする気が起きなかった。

 気づけば、休職期間の終わりが近づいていた。


8-4 退職

 休職から復帰した。

 会社は研修と称して、
C# や JAVA の基礎研修を用意してくれた。

 実際は、国から補助金が出るための
食いつなぎだったと思う。

 しかし、次の仕事は一向に見つからなかった。

 会社は明らかに無理な開発を押し付けてきた。

 薬を飲みながら、なんとか耐えていたが、
もう限界だった。


 ある月曜日。
進捗報告の場で、社長に呼び止められた。

 その瞬間、
潮時だ
と感じた。

 案の定、こう言われた。

 「土日出勤するなら分かるが、休む意味が分からない」
 「あなたではもう稼げない。もう来なくていい」

 私は、
「はい」
と言うしかなかった。


 この会社では、同じ形で
何十人もの社員が辞めさせられていた

 同僚から聞いた話では、
新入社員を大量に取り、即解雇することもあったらしい。

 正社員は簡単に辞めさせられない――
この会社では、そんな常識は通じなかった。

 鹿児島という地方の厳しさに、絶望した。


 結局、社員たちが稼いだ金、
特に残業代を、上層部が吸い尽くしていただけだ。

 経営責任は問われない。

 若い人材をエサにし、
取引先へ常駐させ、長時間働かせる。

 上層部は営業で美味い汁を吸い、君臨する。

 利用価値がなくなれば、切られる。


 氷河期世代のシステムエンジニアは、
現代の人身売買と言ってもいい。

 案の定、この会社は現在、
登記簿上も潰れて、姿を消している。

 そしてここから、
統合失調症という病気との、長い戦いが始まる。

今振り返ると、あの頃の私は、この病気と一生付き合うことになるとは思ってもいなかった。

第9章|鹿児島編 第1期 転機 大阪へ続く

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